乳がん術後ケアコラム
「がんロコモ」ご存知ですか?
2021.9.30「がんロコモ」ご存知ですか?
先日、NPO法人女性医療ネットワーク主催による「がんロコモを知っていますか?」 ~がんになっても動けるからだ・骨転移を中心に~をオンライン受講しました。
「がんロコモ」の「ロコモ」は「ロコモティブシンドローム」を指します。
「ロコモティブシンドローム」(以下ロコモ)とは、2007年に日本整形外科学会が提唱。年齢を重ねることによって筋力が低下したり、立ったり、歩いたりといった移動の為の運動機能が低下した状態をいいます。
ロコモ自体は病気ではありませんが、高齢化が進む日本ではロコモから寝たきりや要介護への移行を予防することが必要と考えられています。ロコモによる運動不足が生活習慣病を悪化させるケースもあれば、重度な生活習慣病に起因する身体活動の低下がロコモを悪化させるなど、互いに影響しあって全身の機能低下を引き起こしていることも少なくありません。そのため、ロコモはできるだけ早い段階で発見し、適切なリハビリテーションや治療を行うことが“健康寿命”の延伸につながると考えられています。
「がんロコモ」は、2018年度の日本整形外科学会で提唱。がんの骨転移・がんの治療などが原因で運動器(骨・筋肉・関節・神経)に障害が起こり、動くことが困難になった状態を指します。がんロコモが進行すると、日常生活に支障が生じ、要介護になるリスクが高まるとされています。
がんの新規罹患者が2020年の推計で年間100万名を超え、がんと共存する中で、日常生活動作(ADL)を維持し、生活の質(QOL)を大切にする考え方が広まっています。
がん患者さんに起こる運動器の問題には大きく3つの要因があります。
- 運動器に直接できるがんによる問題(骨肉腫、骨転移など)
- がんの治療によって起こる運動器の問題(骨や関節が弱くなる、筋力低下など)
- がんと併存する運動器疾患を放置することによる症状の進行・悪化(骨粗鬆症、変形性関節症など)
がんになると、運動器に痛みや不安を抱えていても、対処をすべて後回しにしてがん治療に専念してしまいがちです。その痛みががんによる痛みなのか、がん治療に伴って起こることなのか、もともと持っていた疾患なのか、原因を見極めないままですと、がん患者さんのロコモが進行し、がん治療と同時に運動器障害となれば、どちらの治療も辛い思いをしなければなりません。
医療従事者の中でも運動器問題は「がんが治ってから何とかしよう」という考えの方が多くいらっしゃいましたが、「がんロコモ」が提唱されたことで、骨転移の患者さんへのアプローチ方法も変化しています。なぜなら、1日入院するだけで2%の筋力が低下するというデータがあります。「がんだから運動制限は仕方ないな・・・」と考えず、がん治療とがんロコモ治療を同時並行で進めていく必要があるかもしれません。
今では、がん患者さんの治療方針などを決めるためにさまざまな分野の専門家が集結し、ディスカッションや共有などを行う「キャンサーボード」を開催し、患者さんへのアプローチ方法を検討されています。
気になった方は是非、医療従事者へ確認してみてください。
- この記事を書いた人
- 宮浦@ピンクリボンアドバイザー
2012年よりアモエナ製品担当。同年より日本乳癌学会学術総会を毎年聴講。また、ピンクリボンアドバイザー制度創設2013年から受験。同年初級、2014年中級、2016年上級を取得(すべて第一期)。